DE BEYOND記事まとめ - 2023年 CROSS TALK(対談インタビュー)編 -
こんにちは!
「DE BEYOND」編集部です。
2022年の12月に始まった「DE BEYOND」ですが、特に昨年力を入れたのが、有識者の方をお呼びし、当社プロダクト開発責任者の時田一広と対談いただく「CROSS TALK(クロストーク)」です。
なんとこの1年間で、10人の有識者の方々にご自身のご専門分野と「デジタル通貨」をかけ合わせたお話を聞くことができました。
今回は分野別に分けて各対談コンテンツのダイジェストをお送りします!
街・都市づくり
最初に取り上げるのが、記念すべき第1回目のクロストークにご出演いただいた河合雅司さんです。人口減少対策総合研究所理事長で、ベストセラー『未来の年表』著者である河合さんは、確実性の高い人口推計という指標を基に未来社会を予測しています。
ここからの20年間は75歳以上の高齢者が増え、若い世代が減っていく時代、さらにその次の20年間には高齢者の数も減り始めていきます。日本で加速度的に少子高齢化が進むという揺るぎない事実を受け止め、40年先を見据えた国や街づくりをする必要があると、先端テクノロジーも活用しながら対策を講じる重要性を唱えます。
「人口減少問題に取り組んでいくことは、遠い先の世代により良い未来を渡すための各世代の『リレー』」であると河合さんは述べていますが、デジタル通貨がそのリレーのバトンを担うことができるかもしれません!
次は、「全米でいちばん住みたい街」といわれる環境先進都市・ポートランドのポートランド市開発局(PDC)で都市計画の一翼を担っていた山崎満広さんです。全米で初めてサステナビリティと経済成長を両立させた街・ポートランドですが、理想的な都市開発にデータの活用は欠かせないとのこと。
そのポイントの一つが「価値の見える化」です。価値を可視化して付加価値を生むテナントや企業を誘致することで開発エリアの活性化を促し、土地の価値を上げることで収益を生むといったデータドリブンなエリア開発事業がアメリカでは実践されています。
トレーサビリティが取れるデジタル通貨はまさに「価値の見える化ツール」です。街の機能や意匠的な価値だけでなく、「人の想い」など見えなかったものに新たな価値を付けることでより本質的な評価につなげることができるのではないでしょうか。
一方で、ポートランドの方々は“テック音痴”で、「テクノロジーだけではサステナブルは実現しない」と山崎さんは付け加えます。では、ポートランドの人たちにとってネイチャーポジティブなテクノロジーの関わり方とは何なのでしょうか?
地方創生・社会関係資本・シェア文化
デジタル技術を駆使した「日本の新しいローカルコミュニティ」をデザインしているのが、Next Commons Labの林篤志さんです。林さんは、誰もが恩恵を受けるべき価値・資本である「コモンズ」に安定的かつ持続的にアクセスできることが重要であり、その仕組みの実現やに新しいガバナンスの成立には「ブロックチェーンが必要不可欠」だと言います。
また、これまでの資金や金融資産といった単一的な価値観でしか測れなかったものが、ブロックチェーンで価値を多元的に扱えるようになると、例えばBS(貸借対照表)で新たな資産の価値指標をつくれるなど、プルラリティ=多元性・複数性へと開かれた社会をデザインすることが可能になってきます。
今や地方のDAO(分散型自律組織)活用として最も有名になった新潟県旧山古志村でのデジタル村民をつくるプロジェクト「山古志DAO」など、最先端テクノロジーを駆使したこれからのコモンズやローカルコミュニティのつくり方、地方創生のヒントがたくさん詰まった一本です!
「シェアリングエコノミー」という言葉を聞いたことはありますか?個々人が持つ場所やスキル、時間といった有形・無形の遊休資産を活かしたり、貸出しを仲介するサービスです。借主は所有することなくモノやサービスを利用することができるウィンウィンな仕組みで、Uber Eats、メルカリ、タイムズカーシェア、クラウドワークスなど既に広く普及しています。
そんなシェアリングエコノミーの伝道師として活動しているのが、シェアリングエコノミー協会代表理事でもある石山アンジュさんです。シェアリングエコノミーが生まれた背景や世界の潮流などを伺いながら、分散型システムとして相性が良いシェアリングエコノミーとデジタル通貨の可能性や地方のシェアリングコミュニティへの活用法を探ります。
「みんなで幸せになりたい。だから、創業者や役員に権力が集まらない組織をつくろうと思う」と語るのは社会活動家の武井浩三さんです。武井さんは最初の起業の失敗体験から、権力を民主化して平等と公平を実現した「自然経営(じねんけいえい)」という独自の経営スタイルを確立したことでも有名です。
ブロックチェーンと自然経営には共通点があります。それは「分散化」と「透明性」。“分散化という思想の社会実装”でもあるブロックチェーンは、「信用革命」と呼ばれる、産業革命とIT革命に続く大きな革命にも発展するポテンシャルを秘めています。
そして、いい会社をつくるためには経済活動の根幹であるお金のシステムも変えていく必要があると武井さんは加えます。武井さんいわく、経済の本質は「助け合い」と「分かち合い」。想いや共感といった社会関係資本(ソーシャルキャピタル)という法定通貨の価値基準では測れない価値をコミュニティの経済活動にうまく循環させる仕組みをつくるために、eumo(ユーモ)という新しいお金をつくり上げたお一人です。そんな武井さんと、お金の未来について本気で考えてみました。
キャッシュレス決済・金融改革・新しい経済
キャッシュレス決済が戦国時代の様相を呈するなかで、auフィナンシャルホールディングスを立ち上げ、金融事業を本格的にスタートさせたKDDIグループ。なぜ、金融業界に参入したのでしょうか?代表取締役社長の勝木朋彦さんに戦略を聞きました。
さらに勝木さんはキャッシュレス決済の新たな価値を見出すために、その起源に遡ります。世界初のキャッシュレス決済であるクレジットカードの歴史を紐解くことで、「新しい決済システムの普及には何が必要か?」という問いの答えを逆説的に解き明かします。そこにデジタル通貨の普及の鍵が潜んでいるかもしれません。
「真の金融改革のカギを握るのは、ブロックチェーンに基づいたA2A(Account to Account)決済」と話すのは、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社(DTC)執行役員の赤星弘樹さんです。
長いこと金融とIT業界の変遷を見てきた赤星さんが注目をするのがA2A決済です。しかし、普及には金融・決済インフラのユーザー体験を大きく変えることが重要です。そのポテンシャルを担うのがブロックチェーンだと言います。
一方で、金融業界にずっと携わってきた赤星さんですが、ブロックチェーン技術の活用の一つとして注力を入れているのが、社会課題とのかけ合わせです。トレーサビリティで事実を見える化させることで、今までブラックボックス化していた実態を浮き彫りにし、社会課題の解決を強く推し進める可能性を秘めているからです。社会を半歩先に進める決済インフラについて赤星さんと考えます。
同じく金融機関向けのコンサルティングに携わるアクセンチュア株式会社の武藤惣一郎さんもまた「社会の価値が、経済合理性に追いつかないところまで行き着きつつある」と、社会価値の重要性について指摘します。
武藤さんは、既存の市場メカニズムのなかで、環境負荷の低い製品や「貢献したい」という想いなどの社会的価値に対していかに市場原理が働くように金融機関が介入できるかが重要ではないかと考えます。
そして、そこにはデジタル通貨が関与できる可能性があるとのこと。価値あるものに対してしっかりと市場原理が働くような仕組みをいかにデジタル通貨でつくれるのか?金融業界にずっと携わっていた武藤さんならではのデジタル通貨×社会課題のアイデアが溢れたお話を伺います!
Web3 × AI
ここ数年で見聞きするようになった「Web3」。仲介者が存在せず、ユーザー個人で情報を管理していくブロックチェーンをベースにした「分散型」のインターネットのことです。
昨年はChat GPTを始めとする生成AIの話題で若干トーンダウンしたものの、実社会への普及は着々と進んでいます。Web3普及のタイミングはいつ頃か?野村総合研究所で長年にわたりインターネットや先進技術の研究をされている城田真琴さんがズバリ解説します。
また、AIについても黎明期から研究されてきた城田さんに、ChatGPTのポテンシャルや、Web3と接続する可能性や起こり得る変化についても詳しくお聞きしました。
ブロックチェーン × アート
最後は趣向を変えて、アート×ブロックチェーンというテーマでお伝えしていきたいと思います。「アート&サイエンス」をテーマに世界中をリサーチしている、編集者・キュレーターの塚田有那さん。ブロックチェーンがアートマーケットに与えたインパクトやアートの世界へのブロックチェーンやデジタル通貨のインパクトなどをお伺いしました。
テクノロジーを駆使した表現は、ともすると真似されてコモディティ化しかねない。デジタルアートの価値付けが難しい理由の一つに複製の容易さがあります。そこでアート業界で注目されているのが、価値の一意性を示すNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)です。塚田さんがキュレーションした「NFTアートは100年後の『骨董』になり得るか?」を紐解きながら、デジタルアートの価値を探りました。
また、デジタル技術の進化によって「死後のありよう」や「死にまつわる物語」も変わっていくことが予想されます。自分の終わりから未来を展望する展示「END展 死から問うあなたの人生の物語」から、テクノロジーが可能にする「未来の物語」を想像します。