デジタル通貨の機能的価値とは?
多様な才能が創るプラットフォームサービスデザイン
——こんにちは。本日は宜しくお願いします。まずはお二人の業務について教えてください。
鳥井晋吾(以下、鳥井):私はデザイナーとしてプラットフォームサービス全体のUI/UX(ユーザー体験やデザイン)設計を担当しています。いかに“シームレスでナラティブな体験”を提供できるプロダクトをつくれるかが私のミッションです。
そのためには、表面的なデザインばかり考えるのではなく、本質的に何を提供するプロダクトなのか理解しなくてはいけません。
私たちのデジタル通貨はお金そのものにプログラミングできる"プログラマブルマネー”です。これは銀行の預金を直接動かすシステムで、銀行法にもかかわってきます。そのため、法律の勉強もしています。
——デザイナーが法律を勉強するなんて初めて聞きました!藤井さんはいかがですか?
藤井陽大(以下、藤井):共通領域プラットフォームの検討は進んでますが、付加領域プラットフォームはほとんど手つかずでした。そこで私は、これまでの銀行や金融機関で決済取引のシステム設計や企画運営をしてきた経験を踏まえ、付加領域においてまずは基本的にあるべき機能とは何かと、それをシステム化するための業務フローを検討・作成しています。
付加価値を生み出す二層構造
——共通領域、付加領域という言葉が出てきましたが、詳しく教えてください。
鳥井:ディーカレットDCPのデジタル通貨は、「共通領域」と「付加領域」の二層構造で構成されています。共通領域とはデジタル通貨の管理や発行にあたって銀行とともに提供するサービスのことで、デジタル通貨のコア機能です。
一方で付加領域は、企業がデジタル通貨を利用する時に使うさまざまな機能をもっています。お金の動きはブロックチェーン*1 に記録されます。ブロックチェーン上に銀行の預金口座があるようなイメージです。
付加領域では、スマートコントラクト*2 で商品とデジタル通貨の流れをリンクさせて決済したり、独自のポイントやクーポンを付与することなどもできます。
手数料、スピード、利便性…デジタル通貨がもたらす機能的価値
——デジタル通貨によって得られる新たな機能や価値とは具体的には何がありますか?
藤井:送金などの手数料体系が変わり、キャッシュレス決済などで裏側で発生していた仲介コストが抑えられる可能性があります。
また、リアルタイムでお金を動かすこともできます。企業間では支払いが数ヶ月遅れることは多々ありますが、デジタル通貨なら物やサービスの受け取りと同時に決済ができるようになります。企業やお店のキャッシュフローが大きく改善します。
——企業間取引がスムーズになりそうですね。
鳥井:個人的には、お金の移動が追跡できる「トレーサビリティ」が大きいと思います。そもそもブロックチェーンという分散台帳技術による追跡で、不正利用の発見や利用制限を設けることが可能になり、起きた事象の証明もしやすくなります。
——いろいろな社会課題を解決できる可能性を秘めているわけですね。
鳥井:またトレーサビリティによって取引記録が関係者には閲覧可能になり、書類作成や承認処理などがスマートコントラクトで自動処理されることで業務効率が格段に上がることが期待されます。
鳥井:ゆえに、事務処理の時間が大幅に削減され、本来の業務に使える時間が増えることの効果が大きいです。
——より創造的なことに時間を使えるようになるわけですね。
鳥井:そうです。その核心を担うのが「プログラマビリティ」です。
プログラマブルマネーがつくる変革の起爆剤
——プログラマブルマネーによって、どのような体験が生み出されますか?
鳥井:実は私たちもその全貌は見えていません。なぜなら、人間は体験してないことは想像できないからです。
スマホの登場で私たちの生活は大きく変わりましたが、それはスマホだけでなく、サードパーティによって生み出されたアプリの数々によるものが大きいですよね。スティーブ・ジョブズさえも、どう使われるのかまでは正確に予測できなかったわけです。
——社会に普及して初めてその真価が分かるわけですね。
鳥井:スマホは新たな世界が広がったターニングポイントでした。私たちの仕事は、デジタル通貨でその変革の起爆剤をつくること。そのうえで、プログラマブルマネーは世の中に全くないものなので、どういった体験をつくるかが重要かつ挑戦です。
——では次回、具体的にどのように新たな体験価値を生み出そうとしているのかについて聞いていきたいと思います。