自律分散型で、クリエイティブなマネジメント
少数精鋭のクリエイティブなプロフェッショナル集団
ハナエ:プロダクト開発グループでは独自のマネジメント手法を取り入れているとのことですが、その点を詳しく教えていただけますか?
清水健一(以下、清水):独自かどうかはわかりませんが(笑)。デジタル通貨事業の立ち上げにともない、エンジニアもイチから採用しているため、エンジニア一人ひとりの強みが最大限に活かせるチームにしたいとは考えています。
現在は、アプリケーションを開発するソフトウェアエンジニアと、ブロックチェーンやクラウドネイティブなインフラ基盤を開発するエンジニアの2チームに分かれています。それぞれ、エンジニアの強みとクリエイティブ性が発揮できるような環境づくりを意識しています。
ハナエ:エンジニアさんはロジカルに淡々とタスクをこなしているイメージでしたが、クリエイティビティが必要なんですね。
清水:ニーズや課題を解決するための効率重視のタスクももちろんありますが、特に私たちが目指すデジタル通貨を実現するための思考プロセスにはシーズ志向*1 も重要で、エンジニアは技術を起点に新たな価値を創造するクリエイティブ性が求められています。
私たちは単に今ある決済サービスを模写したプロダクトサービスをつくっているわけではありません。今ある通貨の価値と役割をデジタル化することにより、新たな価値を世の中に生み出そうとしています。
そのためにエンジニアのプロダクト開発に対する開発プロセスの考え方や、日々の意識がどこに向いているのか、いま向いている方向が妥当なのかリードしていくのが私の役目です。
セルフマイクロマネジメントとマクロマネジメントで、成果を出す
清水:そこで大事な点が2点あり、「セルフマイクロマネジメント」と「マクロマネジメント」の使い分けです。
ハナエ:それぞれどう違うのですか?
清水:マイクロマネジメントは一般的には「行動を細かく管理・チェックし、過干渉してしまうマネジメント」といったどちらかというとネガティブなイメージですが、私が求めているマイクロマネジメントは、自分自身に対してです。
時間もリソースも有限なので、まず無駄なタスクはつくらない、増やさない。またタスク一つひとつの目的や意味を自問したり、各チームで議論したりしながら最短距離のソリューションを考えることを求めています。
もちろん、セルフとはいえマイクロマネジメントし続けると完全合理的なタスクのみの価値を生み出すという罠に陥るわけですが、そこはいわゆる20%ルール*2 のような仕組みを取り入れメリハリをつけられるような取り組みもしています。
一方で、部下に対しては自主性を尊重するマクロマネジメントで接します。なぜなら、上司が事細かに指示を出すマイクロマネジメントは、それぞれが考え悩んで答えを出すことを繰り返して生み出されるであろう深い理解や、自身の気づきにもとづくクリエイティブ性を殺してしまうからです。目指すところは、セルフマイクロマネジメント(効率)とマクロマネジメント(創造性)のバランスが取れた状態です。
フルリモートのチームマネジメント
ハナエ:自由にさせるところは大胆に任せているわけですね。
清水:はい。しかし、結果が出せなければ意味がありません。そのため、細かくは何やっているかよく分からないので“放ったらかし”ということはしません。
ハナエ:その塩梅って難しいと思いますが、実際にはどう進めていますか?
清水:私たちの開発プロセスはスクラム開発*3 を採用しています。スクラム開発のフレームワークにはいくつか定義されたイベントがあります。そのイベントを中心に、各人がプロダクト開発でどんな役割を担っていて、それがどこにつながるのか、また全体への影響はどの程度なのかなどを明確にします。それらを踏まえ、より良いアイデアがないかといった問いかけやアドバイス、反復行動の意識づけのためのコミュニケーションを強くやっています。
ハナエ:プロダクト開発グループではフルリモートを採用しているとのことですが、どのように一人ひとりを導きながら全体の士気を保ってますか?
清水:それぞれの強みと弱みをちゃんと見極めるため、本人の意識や考えを取り入れるようにしています。プロダクト開発に求められる技術スタック*4 は多岐にわたるので、より個々がもつ強みを活かした開発スタイルでないと実現できません。
何でもできるオールラウンダーではなく、固有の専門性をもつスペシャリストの集まりなので、1on1ミーティングで足りない部分をどう補うか、各チームで課題を定期的に振り返るなどバランスをとりながら密にコミュニケーションしています。
ポイントを押さえたマネジメントで、自律分散型のチームをつくる
ハナエ:フルリモートの課題は何かありますか?
清水:プロジェクト発足時の2年前からフルリモートですが、プロダクトの価値を上げるという意味でのアウトプットは確実に出せていると思います。一方でさらにアウトプットの質を高めるには、価値観の共有(コミュニケーション力)や計画性(セルフマイクロマネジメント)が必要です。
現在は「oVice」というバーチャルオフィスを導入して、ちょっとした会話やコミュニケーションを取りながら行っています。私の手がかかることはほとんどなく、お互いを積極的にフォローしながらスムーズに進められるようになってきています。
またプロダクト開発の計画進行は、2週間ごとのイテレーション開発*5 、いわゆるPDCAサイクル*6 を短期間で回しています。前の期間で目標達成できなかったことを掘り起こし、課題解決に向けて次の2週間でどうトライするかということを各チームごとに自律して考えながら進めています。
しかし、プロジェクト発足時からフルリモートなので対面していない人も多く、組織全体としてどう最適化させるかを模索しているところです。ワークスタイルにも完全に慣れた人もいれば、まだアジャストしている人もいます。
現状のディーカレットDCPは、業種業態や今までのキャリアが大きく異なる人材が集まっています。その分、オープンイノベーション的な発想でお互いの強みを活かした新しいサービスを生み出せる大きな可能性があると感じており、その方向にうまく向けられるようリードしていきたいと思います。
ハナエ:ディーカレットDCPのプロダクトや開発グループの日々の努力を知って、デジタル通貨という全く新しいプロダクトを創り出すことの大変さや意義を学ぶことができました。ありがとうございました。
‐編集後記‐
今回もお読みいただきありがとうございます!
最近一段と寒波が増しましたね…。こんな寒い日はご飯を食べないと明日を乗り超えられない!と毎日言い訳をつけて蓄えを増しているハナエです。
さて、少しだけそんなハナエの今の仕事への想いを話したいと思います。
私は好きな言葉の一つに、アインシュタインの
「失敗ではない。うまくいかない1万回の方法を発見したのだ」という言葉があります。
この言葉は、何度も壁にぶつかって失敗を繰り返している私たちの背中を押してくれます。世の中にないものを創り出した先駆者としてのアインシュタインの言葉からは、自分自身を信じて、想像を超えた努力を続ける覚悟が大事だと感じました。
これを乗り越えてディーカレットDCPのデジタル通貨が世に誕生した時には、社会インフラにインパクトをもたらすと思います。
未来の社会インフラになるデジタル通貨は、私たちの「想い」が形になり価値を提供し、そこに人々の「想い」がつながり、初めてでき上がる大きく温かい大樹のようなものではないかと感じました。
PS:清水さんはロジカルで仕事も厳格です。お話をしていると勉強になることばかりなのですが、ご飯をご一緒させていただいた時には自分のお肉を私に分けてくださる心お優しいお方なのです✌