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唯一無二のデジタル通貨をつくる開発技術

こんにちは、ディーカレットDCPのハナエです。
前回は、デジタル通貨プラットフォームにおいて、異なる価値のネットワーク経済圏をつなげることで重なり合った部分で共創が生まれ、新たな経済圏ができ上がっていくというお話でした。
 
しかし、それぞれのネットワーク経済圏をつなげることは簡単ではなかったとのこと。そこでプロダクト開発部門のプロダクト開発グループヘッド
である清水健一さんに、技術的な課題や壁を乗り越えたからこそ生まれたプロダクトの強みついて聞いていきます。

前回までの記事 ▷
vol.2-1:お金の価値と役割とは?
vol.2-2:個別の価値が重なり生まれる、新たな経済圏

ハナエ:異なる価値観のネットワーク経済圏をつなぎ合わせるのが最大の難所ということでしたが?
 
清水健一(以下、清水):そうです。なぜなら、それぞれ規格が異なるものをつなげたり、駆動させたりすることは非常に難しいからです。それは、デジタルの世界だけでなく物の製造など何でも言えることです。
 
ハナエ:物理的に規格が合わないという方が想像しやすいですが、デジタル上でも難しいのでしょうか?
 
清水:目に見えないので一般の方には理解しづらいと思いますが、非常に難しいです。少し技術的なことを交えて説明していきますね。

プロダクトのベースとなるネットワーク基盤の約束事

 清水:情報通信は、ネットワークと呼ばれる特定の区切られた空間どうしをつなげる技術で実現しています。人間社会では国や地域をまたげば言語が変わるように、コンピュータもネットワークごとに異なる言語をもっています。

そこで、“Hello”や“你好(ニーハオ)”が「こんにちは」と訳されるように、異なる言語ごとに取り決めをしておけば、別のネットワークをもつコンピュータ同士でも情報を交換することができます
 
そのため、人間で言うところの共通のルールや約束事が必須です。それをコンピュータでは「通信プロトコル」と言います。

私たちがプラットフォームを動かすのに用いているブロックチェーンも同じで、それぞれのビジネスにおける経済圏を“ネットワーク”という概念で整理しています。そのため、ブロックチェーンごとにプロトコルがあります。

参考記事 ▷ ホントにわかるブロックチェーン2 ブロックチェーンって本当に安全?

ビットコインやイーサリアムといった、いわゆる暗号資産で有名なものたちもプロトコルの一種で、約束事が異なったネットワーク基盤なのです。どのプロトコルを選ぶかによって実装が大きく変わるため、最初の選択が重要になってきます。

異なるプロトコルをつなげた、唯一無二のプロダクト

清水:私たちのデジタル通貨は、ステーブルコインでも使われおり、社会実装において実績があるのと、プログラマブル性を標準で具備しているイーサリアムを採用しました。なぜならば、デジタル通貨は単純な送金機能だけではなく、デジタル化されることによる付加価値を自由に設計、具備できる仕組みにしたいからです。
 
ハナエ:数あるブロックチェーンのなかでも、イーサリアムが特にいろいろなことができたわけですね。

清水:そうです。しかし、一度選んでしまうと異なるプロトコルのブロックチェーンでつくられたネットワークを一つのネットワークにすることができないのが現状です。

以前からブロックチェーン技術のISO化(標準化)や、異なるブロックチェーンネットワークをつなぎ合わせるという課題は、オープンソースソフトウェア(OSS)*1 コミュニティをはじめ、いろいろなところで議論し続けられています。

*1 オープンソースソフトウェア(OSS):ソースコードが公開されているソフトウェア。誰でも改変や再配布が可能。

一般的にはまだ実装はされていないですが、異なるプロトコルをつなげることができる技術はいくつかの案が提案されています。そのうちの一つを、私たちで独自に実装しプロダクトに反映しています。

私たちのプロダクトがなぜ異なるネットワーク技術を欲しているかと言うと、二層構造の共通領域と付加領域はブロックチェーンネットワークが異なるからです。この共通領域と付加領域をつなぎ合わせるのがもっとも大きな技術課題の一つでしたが、ブロックチェーン技術やその周辺オープンコミュニティのお陰で唯一無二のプロダクトをつくることができました。

プロダクト開発部門プロダクト開発グループヘッドの清水健一さん

二層構造デジタル通貨プラットフォームの強み

清水:普段使う決済サービスのシステムって、基本的にはサービスを提供する企業が決済サービスごとに独自に開発しているケースがほとんどです。また、決済サービスとつながるお金のシステムは分離されてしまっていて、個々のサービス変化に追従しにくく、新たなビジネスアイデアに対して柔軟な対応がしがたいのが現状です。
 
一方でデジタル通貨プラットフォームは、決済サービスが必要とする基本機能を具備しているだけでなく、各種サービスとの連係も図れることから、より自社のビジネス・サービスに注力することが可能となり、変化に対して柔軟な対応ができることが強みなのです。
 
ハナエ:既存の枠によるしがらみを取っ払うことができるわけですね。
 
清水:そうですね。また、世の中で使われているビジネスのシステムでも、これらの技術を活用することで企業間をまたいだ連係が可能になると考えています。

本質的なDXを加速させる

ハナエ:デジタル化することによって、やり取りのスピードや効率なども上がりますよね。
 
清水:経済活動そのものが時間軸においてどんどん効率化されていくので、本質的なDX(デジタルトランスフォーメーション)と相性は非常に良いと考えています。また、メタバースやNFTといったWeb3*2 の新たな価値観とも自然とつながっていくので、決算手段にとどまらず、想像もつかない付加価値を生み出せる可能性があります

*2 Web3(Web3.0):ブロックチェーン技術を活用した、分散型や非中央集権型と呼ばれる「次世代のインターネット」。ビッグテックなどの巨大な仲介業者を排除し、情報へのアクセスとデータ利用が民主化された世界を指す概念。 

ハナエ:ポテンシャルがあるわけですね。
 
清水:予測不能な可能性を秘めています。
 
ハナエ:私たちのプロダクトの強みと可能性がよく分かりました!次回は、そんな先駆的なプロダクト開発を進めるチームを清水さんがどのようにつくり上げているのかについて、引き続きお聞きしていきたいと思います。

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