デジタル通貨DCJPY商用化への道・4 DCJPY商用化
2023年に発表したホワイトペーパーを基に、商用化に向けた最終調整を積み重ねてきました。その努力が結実し、今夏、ついに商用化リリースを迎えます。本編では、商用化発表の前に全体像や概要を「DE BEYOND」の読者の皆さまに向けてお見せします(文:副社長COO 時田一広)
商用化プロジェクトの合意
概念検証で実用化の確認ができたことで本格的な商用化へ舵を切り、リリースまでのマイルストーンを策定します。当社内でもビジネス開発とプロダクト開発の体制を整備するなど取り組みを加速します。
DCJPYの商用化には発行銀行とビジネスを行う事業者と共同でプロジェクトを進める必要があり、発行銀行についてはデジタル通貨フォーラムなどを通じてメガバンクを始め複数の銀行に打診してきました。結果的にGMOあおぞらネット銀行(GANB)が最初の発行銀行になります。GANBは創業時からテックファースト、テックバンクをビジョンに掲げるデジタルサービスに積極的な銀行で、充実した銀行APIで組込み型金融などのサービスを推進していました。
当社の取り組みにも早くから理解をしていただいた点、テクノロジーに強い点などからDCJPYネットワークとの接続の協議がスムーズに進んだこともあり、DCJPY発行銀行になることにおいて前向きに検討いただきました。
事業者の方は、インターネットイニシアティブ(IIJ)がデータセンターで利用する電力に再生可能エネルギーを使用した証明として、電力取引所が発行する非化石証書や民間企業が発行するボランタリークレジットをデジタルトークンとして発行し、データセンターの利用企業(顧客)との間で取引を行うことになりました。IIJの企業間取引にDCJPYネットワークを利用することで、IIJとIIJの顧客はデジタルトークンを用いた取引と決済の自動執行ができるようになります。今後は取引の対象を広げていく構想も考えているようです。
両社との協議を進め、2023年10月に共同でのDCJPY商用化への取り組みが合意され、本格的に商用化に向けたプロジェクトが始動しました。
DCJPYはトークン化預金(Tokenized Deposits)?
商用化プロジェクト発表の2023年秋頃から、国内外でDCJPYの発行方式である預金型デジタル通貨がステーブルコインとは明確に分けられるようになりました。銀行預金そのものをトークン化するDCJPYの方式は従来の預金と同等の扱いであり、預金保険や会計の扱いも同様と考えられます。
DCJPYは近代において整備されてきた中央銀行と民間銀行の二層構造の元で民間によるイニシアティブで経済の資金配分を提供する枠組みに入っており、米国のメガバンクであるJPモルガン銀行なども同様の取り組みをしています。
このようなことから、日本銀行など各国の中央銀行が取り組みを進めている中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)との親和性も高いと考えられます。
商用化システムリリース(顧客検証開始)
国内では過去にない銀行預金型トークンであるDCJPYをリリースする3社共同プロジェクトは、当社とFZ銀行であるGANBが共同で開発したサービスをBZ事業者であるIIJが利用するというスキームになります。
2023年10月から一年足らずで、各社が新規のサービスとして開発し、それらを連携させて本番稼働させるのが商用化プロジェクトのゴールです。当社とGANBは既存の銀行システムとFZを接続してDCJPYを利用できるサービスを実現するために接続仕様や業務設計、システム開発、契約関連など様々な多くのタスクをこなす必要があります。前述の通り、銀行システムは社会インフラであり、高い安全性が求められるためシステムの品質はもちろんのことサービス設計にも安全性の考慮が重要です。
IIJは環境価値取引という新規のサービスを開発することに加えて、顧客に対しての既存のサービスや関連する業務、契約なども整備する必要があります。当社はFZ、BZを合わせたサービス設計とプラットフォーム(DCJPYネットワーク)の本番システムの開発、サービス業務、FZ/BZの契約など最初の商用提供としてPoCでは実施してこなかった膨大なタスクをこなしました。
これらを同時に進めることが商用化プロジェクトですが、短期間でかつエキサイティングな取り組みであり、時間との戦いでもあります。共同プロジェクトは紆余曲折がありながら幸いにもGANB、IIJ両社から様々なアドバイスや協力を得ることで幾度も助けられ、多くの課題を解決して進めることができました。
2024年7月16日リリースに向けた最終段階であるGANB、IIJ両社の顧客検証まで辿り着きました。
そして2024年8月28日、ついにDCJPYによる決済取引が開始となりました。詳細はプレスリリースをご覧ください。