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デジタル通貨はシェアリングエコノミーを加速させる!?

こんにちは、ディーカレットDCPのハナエです。
引き続き、デジタル庁シェアリングエコノミー伝道師でシェアリングエコノミー協会代表の石山アンジュさんにお話を伺っていきます。

前回、シェアリングエコノミーには「中国・アメリカ型の資本主義ドリブンなシェアリングエコノミー」と「韓国・ヨーロッパ型の持続可能主義ドリブンなシェアリングエコノミー」の2種類があることを学びました。それぞれ良い点も悪い点もさまざまでしたね。

今回もプロダクト開発責任者の時田一広とともに、シェアリングビジネス全般にわたる課題について石山さんに教えていただきました。
デジタル通貨が目指す「金融の民主化」が課題解決のキーになるかも!?

前回までの記事 ▷ “シェアリングエコノミー”が世界的に進む背景と潮流

少額決済のコストと手間

時田一広(以下、時田):さまざまなシェアリングエコノミーのビジネスモデルがあるとのことですが、少額決済のことで困っていることってありますか?あるいは、支払いの手間やコストの面などでも。

石山アンジュ(以下、石山):あると思いますね。少額の取引が多いので、例えば企業が500円しか売り上げがないのに振込手数料などを支払わなくてはならない。

また個人の場合、アプリ上で500円の売り上げがあったとしても、その程度であれば換金するまでもなく放っておきます。すると、気づけば失効して売上金が使えなくなっていたとか、少額決済が多いプラットフォームでは、こうしたことが日々起こっています。

もし、個人や企業が10のプラットフォームを併用していて、それぞれで得た500円の売り上げを全部まとめて「5,000円」として引き出せたらいいんですけどね。

一般社団法人シェアリングエコノミー協会代表理事でデジタル庁シェアリングエコノミー伝道師の石山アンジュさん(右)と、ディーカレットDCPプロダクト開発責任者の時田一広

時田:デジタル通貨の一つのアプローチは「相互運用性」です。今、石山さんが例に挙げた状況だけでなく、例えば各サービスが発行するポイントのように、経済圏ごとの通貨が乱立している状況もあります。あるサービスで得た売り上げが別のサービスでは使えない、という状態を解消するのもデジタル通貨の大きな役割だと考えています。

個人情報が「重荷」になっている?

石山:シェアリングビジネスに参入している企業の多くはスタートアップで、創業時に社員が2〜3名というところも少なくありません。しかし、そんな企業でも顧客の個人情報は扱わなければならず、なおかつそのコストとリスクは非常に高い。こうした状況に対してはシェアリングエコノミー協会でも、流出事故が起こらないよう対策を講じているところです。

時田:おっしゃる通り、個人情報管理のコストはバカになりません。それこそ個人情報を適切に扱っていることを証明しようとプライバシーマーク(Pマーク)制度の認定なんかを受けようとすれば、2〜3名の会社ではとても回りません。ですから小規模な企業の場合、顧客の個人情報って持ちたくないですよね?

今まさにデザインしているデジタル通貨サービスでは企業が直接的に個人情報を扱わなくても取引が実行できるようにしようとしています。このようなサービスで企業が個人情報の保有と管理から解放されたら助かるんじゃないだろうか、とわれわれは考えているんです。

石山:それは素晴らしいですね。そこで削減される手間やコストはかなり大きいんじゃないでしょうか。限られた資金を本業とは違う部分に割きたくはないですからね。

時田:政府が推進しているマイナンバーもこうした問題の解消にかなり貢献するはずです。さらにデジタル通貨がマイナンバーのような国のシステムと紐づけられれば、決済にとどまらず、本人確認したうえで税金の支払いや社会サービス各種でもスムーズな取引ができるようになるでしょう。

変わらない「与信」の仕組みを変えよう

ハナエ:支払いの手間、個人情報の管理コスト。それらが解消されたらシェアリングビジネスはもっとスマートになりますか?

石山:もう一つ、何を与信とするかが重要な課題になりますね。従来の与信の仕組みに代わる評価経済のシステムが必要だと思います。

時田:法人間の取引では特に問題になる点ですね。与信というものは、言ってみればご都合主義的に決められてきた感じがあります。例えば、目の前の取引相手が1億円支払うことを約束してくれた。すると、その会社の与信がルール上1000万円だったとしても、1億円に引き上げて取引を成立させるのが慣例です。

石山:一方、個人の与信の場合、専業主婦の方がクレジットカードをつくりにくいとか、フリーランスが住宅ローンを組みにくいとか、さまざまな課題がありますよね。こうした日本の金融審査において銀行預金などに加えて、例えばプラットフォームで稼いだトラックレコードも対象になると良いと思います。

私たちからも大手銀行や信用調査会社などに働きかけをしたいと思っています。資産のあり方や雇用形態は多様化していますし、銀行も顧客を増やしていかないといけない。しかし、銀行はやはり与信の仕組みに手を入れることを嫌がるので、この話はなかなか進展しないんですよね。

時田:日本の与信の仕組みは独特で、何千万円も稼いでいるフリーランスが住宅ローンを組めないのに、年収400万円の大手企業勤続年数10年社員はほぼ組める。昔の慣習を引きずっていて、実情と合っていないんです。

デジタル通貨は与信や融資のあり方を変えられるか?

ハナエ:デジタル通貨は与信のこともサポートできるんですか?

時田:今考えているのは与信情報を共有する仕組みです。例えばお金を借りる人は複数の与信会社から審査を受けることができ、銀行もまた複数の審査結果を見て融資の判断を下すことができます。

お金を貸す主体も銀行だけでなく別のファイナンス会社や個人が投資として融資をすることだってあり得るわけです。まさに金融の民主化です。われわれのコンセプトも「決済の民主化」ですから、こうした流れには積極的に貢献していきたいと思っています。

ハナエ:これまで与信というと、年収とか職種とか債務の支払い状況などが審査対象でしたよね。しかし、近年では中国のアリババグループの個人信用スコアサービス「ジーマ信用」のように、社会貢献の実績なども考慮した信用の数値化も行われています。デジタル通貨でも与信のあり方は変わっていくんでしょうか?

時田:スコアリングする会社ごとに異なる審査方針が採用できると思うんですよ。これまでのように収入だけで審査するスコアリングがあったり、社会貢献の実績まで加味するスコアリングがあったり、与信の内実も複数化してくるかもしれませんね。

ハナエ:社会活動ってなかなかお金にならないことが多いので、新しく事業を起こそうとしても融資が受けづらいですよね。でも、もし「情熱」や「優しさ」といった社会を善くしようとする想いが数値化されて与信の要件になれば、さまざまなチャレンジがしやすくなると思うんです。

時田:そうですね。そういった情報も共有されるようになれば、融資する側はより総合的に判断することが可能になると思います。そういった個々人の想いや新たな価値をお金に載せたいと思ってデジタル通貨を開発しているので、私たちの理念とも矛盾しません。ブロックチェーンはそのあたりの可視化がしやすい仕組みでもあるので、テクノロジーとスコアリングが相乗的に機能するといいです。

日本のシェアリングエコノミーの課題

ハナエ:日本のシェアリングエコノミーの課題は何がありますか?

石山:日本では個人間取引(CtoC)の市場がまだまだ成長段階で、企業から個人への発注や販売といった従来型のBtoCビジネスが主軸です。また、企業間(BtoB)の支払いの方がお金のロットが大きいのが現状です。

ハナエ:それはさみしいですね。

石山:それに、日本のマーケットもヨーロッパと同じくメガプラットフォームができにくく、大企業とシェアリングエコノミーのスタートアップが手を組んだケースが多いです。それ自体は良いことなのですが、その傘下に入ってしまうと枠を超えた発展的な成長は難しくなります

ハナエ:シェアリングエコノミーの良い部分をデジタル通貨がサポートできるといいんですが…。というわけで次回は、デジタル通貨がシェアリングエコノミーの可能性をどこまで広げていけるのか、お二人と探っていきたいと思います。

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