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環境価値の取引はデジタル通貨でどう変わる?

こんにちは。
「DE BEYOND」編集部です。

前回はディーカレットDCPの田子さんに、環境価値とはどういったものなのか、エネルギーとしての価値との違いを、取引の仕組みとあわせて教えていただきました。

今回はそれに引き続き、現在の環境価値取引の課題や、カーボンニュートラルに向けたブロックチェーンとデジタル通貨の役割をお聞きしていきたいと思います。

前半 ▷ 環境価値ってどんな「価値」?


環境価値取引の課題

——早速なのですが、田子さんは現在の環境価値の取引にどんな課題があると考えていらっしゃいますか?

田子:ひと言でいえば、「価値の見えにくさ」ですね。前回お話したように、太陽光などに由来する再生可能電力はまず、認証機関によって価値が証明されます。例えば太陽光発電で100万kWh(キロワットアワー)の発電がされたのであれば、同量を火力発電等で発電した場合と比較して二酸化炭素(CO2)排出が抑えられたことになり、その電力には確かな環境価値があるわけです。

でも、それが流通していく過程で環境価値が見えなくなっていってしまうのが現状の課題かなと。直接グリーン電力等を買う人は、証明された価値を直接購入しますので環境価値は把握できますが、例えば「環境価値が高いエネルギーで商品を作りました」とした場合、その商品を買う人は本当に再生可能エネルギーによって発電された電力で製造された商品なのか、CO2の抑制量は正しい数値なのか、今のところ確かめる術がありません。

コンサルティンググループの田子大作さん

——価値を証明する仕組みがないことによって、環境価値そのものがブラックボックス化してしまう結果、どういったことが起こるのでしょうか?

田子:価値が見えないと、取引に対して懐疑的になりますよね。また、実際に買ったとしても、もともとの価値がよくわからない以上、環境に貢献したという実感を得られません。

この価値の見えにくさ、流通プロセスで価値を証明できないという今の状況が、環境価値の流動性の低さにつながってしまっているのかなと。それが僕の考えている課題です。

ブロックチェーンとデジタル通貨の役割

——その課題を解決できるのが、ブロックチェーンとデジタル通貨ということですか?

田子:はい。今のところはまだ環境価値の取引の規模自体がそこまで大きくないので何とかなっているのかなと思いますが、今後2030年*1 に向けてエネルギーだけでなく、さまざまな製品やサービスに環境価値をセットして売るようになってくると、価値を証明・可視化する仕組みが必ず必要になります

*1 カーボンニュートラルの実現に向けて、国は2030年度までに温室効果ガスを46パーセント削減(2013年度比)という目標を設定。

そこでデジタル通貨DCJPY(仮称)のネットワークを使えば、発電過程で抑えられたCO2の排出量はもちろんのこと、製品の原材料生産から輸送、組み立て、修理、処分まで、全てのプロセスのCO2排出削減量を記録し、製品に表示することができます。どんな環境価値がどれくらいセットされている製品なのか、誰がいつ見てもひと目でわかりますし、記録したデータが改ざんされることもありません。

また、そうした製品の決済に使われるデジタル通貨にも環境価値の取引記録を書き込めるので、取引の透明性がぐっと高まります

——なるほど。価値がきちんと示されて、フェアなかたちで売買できるようになれば、取引に参加したいという人も増えてきますよね?

田子:その通りですね。価値がよくわからないから、お金を出す人も少ないというのが現状だと思います。価値がはっきりと見え、実感できれば、環境価値の高い製品・サービスを買う人が増えますし、企業は製品・サービスの開発資金を投資家から調達しやすくなるはずです。

さらに、環境価値をブロックチェーン上で管理する仕組みとデジタル通貨を使えば、環境価値が転売されて価値が上がるたびに、環境価値を創出した側の企業へ自動的に一定額を還元するといった仕組みも構築可能であり、より環境への投資がしやすい環境になる可能性があります。

また、環境価値を創出した側が、その環境価値がどのような企業でどのように使われたのかも可視化することができるようになり、創出側の企業が環境価値への貢献をより実感できると考えております。

そうしたエコな社会の基盤になるのが、ブロックチェーンとデジタル通貨だと思います。

ちなみに、原材料や製造プロセス全体のCO2排出削減量を可視化する仕組みはカーボンフットプリントといって、旭化成、イオンなど、幅広い業種の企業がライフサイクルアセスメント*2 の一環として取り組んでいます。

*2 ライフサイクルアセスメント:製品・サービスがライフサイクル全体で環境に与える負荷を定量的に算出する手法。

企業の脱炭素経営とデジタル通貨

——先ほど投資、資金調達というキーワードが出ましたが、環境価値は投資家からも注目されているのですか?

田子:はい。海外を含めた機関投資家は、企業がどれくらい環境に貢献しているか必ずチェックして、投資判断の材料にしていますね。そうした動きを受け、「環境会計」や「自然資本会計」といったものを導入し、企業が行った環境保全活動の金額化や数値化(定量化)することで取り組みを評価する会計手法なども出てきています

今後はバランスシート(B/S)や損益計算書(P/L)などにも環境貢献度を示す指標が設けられるかもしれません。また、会計団体でも企業の環境対策や環境貢献度を会計基準にどう反映させるか、議論が進んでいると聞いています。

そうしたなかでDCJPYで決済すれば、各企業がカーボンニュートラルへ向けて何をして具体的にいくら使ったのか、デジタル通貨そのものに記録が残ります。会計の透明性がより高まるはずです。

——会計の透明性が高まれば、環境への貢献度の高い企業により多くの資金が集まりやすくなりますね。最後に田子さんが今後実現したいことをお聞かせください。
 
田子:まずは、環境価値という「価値」をきちんと証明する仕組みをつくることですね。先ほども少しお話したように、証明された価値、可視化された価値というのは必ず動きます。

いつ誰が生み出した、どんな価値なのか、きちんとトラッキングできれば必ず買う人が現れますし、その取引にデジタル通貨を使えば、お金の側でも価値が保証されます。その結果として、環境価値を生み出す企業とその企業に投資する人たちが増えてくるはずです。

——きちんと環境価値を証明して、流通させてお金に換えることで、より豊かでエコな社会に近づいていくと。

田子:そうですね。簡単に言えば、環境価値の証明、トラッキングは世の中のためになること、実現されれば喜ぶ人がいることだと思っています。それがしたくてディーカレットDCPに入社したので、これからも頑張っていきたいですね。

——本日はありがとうございました。

田子大作(デジタル通貨事業本部 コンサルティンググループ シニアマネージャー)|コンサルティング会社、ITベンダー、広告代理店を経て2023年6月より株式会社ディーカレットDCPに参画。 環境・エネルギー、キャッシュレス、システム企画等がバックグラウンド。国の大規模事業への従事経験を多く持つ。 デジタル通貨を利用した社会インフラ構築を目指し、現職に至る。

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