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Web3の仕組みを優しくお伝えします。

Web3とは、ブロックチェーン技術を活用した次世代のインターネットの概念を示すものです。最近は、NFTやDAO、DeFiやそれらの技術を活用したメタバースが注目を集めており、今後のWeb3領域の拡大が期待されています。

現在のインターネット社会はWeb2.0と言われており、スマホやSNSの普及によって一気に世界中に広まりました。コミュニケーション方法が大きく進化し、便利になりましたが、Web2.0の発展により生じている課題もあります。Web3は、そんなWeb2.0の構造に対する問題意識から生まれてきました。

今回は、Web3の特徴や今後デジタル社会にもたらし得る変化を、これまでのインターネットの変遷とあわせて解説していきます。


Web1.0 / Web2.0とは

Web1.0とは、1990年代から2000年代前半ごろのインターネットの黎明期を指す概念です。インターネットの登場により、世界中とコミュニケーションができるようになったWeb1.0時代のデジタルコンテンツは、テキストサイトや静止画が中心であり、情報の流れが発信者から受信者へと一方通行でした。ユーザーは「読み取り専用」のウェブページを閲覧して情報を収集することができるようになりました。

2000年代半ば頃から、Web2.0へと徐々に移り変わりました。Web2.0のもっとも大きな特徴は、ユーザーインターフェイス(UI)やユーザーエクスペリエンス(UX)の劇的な改善と、SNSの普及により個人が情報の発信者であると同時に受信者としてリアクションやコメントをする双方向のコミュニケーションが主体となりました。

2007年のiPhoneの誕生により、利用デバイスはPCからスマートフォンにシフトしました。また、「Facebook」や「Twitter」を皮切りに、「Instagram」、「YouTube」、「TikTok」など画像や動画を中心としたSNSも登場し、いつでもどこでも誰とでも手軽にコミュニケーションができるように進化しました。

また、同時期に出現したAmazonの「AWS(Amazon Web Services)」をはじめとしたクラウドサービスは、インターネット上のサービス開発を劇的に改善しました。オンプレミス*1 のように自社でハードウェアなどの初期投資をする必要がなく、日々改善されるクラウドサービスを活用した開発が主流になりました。

*1 オンプレミス:システムやインフラを稼働するためのサーバーやネットワーク機器を物理的に施設構内に設置して運用する形態のこと。その反対が「クラウド」で、インターネット上でシステムやサービスを利用する形態を指す。

こうした背景から、Web2.0は「SNS・クラウド時代」とも称され、世界中で大規模にサービスを提供するビッグテック[Google、Amazon、Facebook(現Meta)、Apple、Microsoft]がプラットフォーマーとして台頭しました。

Web3とは

コミュニケーション方法が飛躍的に向上した一方で、Web2.0の発展により課題となっている点もあります。それは、個人のデータが特定のプラットフォーマーに集約される「中央集権型の支配的な構造」になり、個人情報の扱いが不明瞭になったことです。サービス運営者であるプラットフォーマーにデータが集約され、セキュリティリスクの高まり、データビジネスの利権が集中しました。アカウント停止の権限や、投稿やフォロワー情報の扱いなどが制御されています。

Web3は、このようなWeb2.0の課題を解決するために特定のプラットフォームにデータが集約される中央集権型ではなく、ユーザー個人がデータを保持、管理していく分散型(非中央集権型)の構造を指す概念です。

特定のプラットフォーマー(サーバー)を介さずに、それぞれのコンピュータ(PeerまたはNode)同士で対等に通信を行う分散型の「Peer to Peer(P2P)」ネットワークが形成される構造です。

P2Pネットワークは誰でも参加可能なパブリックなもので、不特定多数の人が接続するため、悪意のあるユーザーが参加したり、接続先のセキュリティに問題があったりする可能性があります。そこで、P2Pネットワークの安全性を担保するために活用されているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンは全ての取引情報を記録するためのデータベースで、データをブロックごとにまとめ、それをチェーンのように連結させて保管し、共有しています。記録後のデータの改ざんが非常に困難であることから、取引データの真正性を守る構造的な工夫が施されています。

参考記事 ▷ ホントにわかるブロックチェーン1  ブロックチェーンとは?

Web3の特徴

では、ブロックチェーン技術を活用したWeb3により世界はどう変化するのでしょうか?

特定の管理者が存在しないWeb3の世界では特定のプラットフォームに個人情報を登録する必要がなく、匿名性の高いウォレットIDで情報を管理するので、個人情報が守られることがまず挙げられます。そして、特定のECサイトやネットバンキングを介さず、国境を越えた直接送金や物品販売が容易になります

しかし、Web3の最大の特徴はP2Pのオープンなネットワークで、各ノードが全く同じデータを保存していることです。これは、今までのインターネットの構造を逆転させるほどの破壊力をもたらします。

インターネットは通信プロトコルという共通のルールや約束事を基に成り立っています。Web1.0に「TCP/IP」や「HTTP」など世界標準プロトコルが出現し、ウェブブラウザやメール、Web2.0以降はSNSなどのアプリケーションがその上のレイヤーに構築されて稼働しています。

Web2.0のプラットフォーマーはインターネットの通信プロトコルの上で稼働するアプリケーションの精度とサービスの利便性を高め、より多くのユーザーを取り入れてデータを独占することで競争優位性を高めました。

しかし、Web3に新たに加わったプロトコルであるブロックチェーンは参加者全員が等しくアクセスできるデータベースであるため、共通のデータを使って誰でもアプリケーションを生み出すことが可能です。さらには、データが共有されることで他のアプリケーションに乗り換えるスイッチングコストが低いことも特徴です。

何より、ブロックチェーンは独自で「トークン」を発行・交換できることに革新性があります。トークンはもともとインターネット上の通貨であるビットコインなどの暗号資産から始まり、有価証券である「セキュリティトークン」や、昨今よく話題にあがる「NFT(Non Fungible Token)」など多岐にわたります。

つまり、データやインターフェイスといったアプリケーションではなく、トークンによってサービスが選ばれるといった変化が起きつつあります。これは、トークンを発行できるプロトコルそのものに価値をもたらしました

Web3の主なサービス

トークンの優位性が高まるなか、Web3ではトークンを活用したサービスや組織が続々と誕生しています。その一例が、コミュニティ内のサービス利用のための権利や機能を持つ「ユーティリティトークン」を発行する自立分散型組織「DAO(Decentralized Autonomous Organization)」です。

■ DAO

DAOには特定の管理者が存在しません。その代わりに参加者は、投票権の機能を持つ「ガバナンストークン」を保有することで組織の意思決定に関わることができ、協調しながら自律的に組織運営を行っています。コミュニティが活性化するとトークンの価値も上がってさらなるトークンが得られるなど、コミュニティごとに能動的にうまく機能するためのインセンティブ設計が成されています

DAOの一例として、ステーブルコインを発行管理する「Maker DAO」プロジェクトがあります。

Maker DAO内では、MKR(メイカー)という名称のガバナンストークンが発行されます。メイカーを所有していると、参加者は「ガバナンス投票」と「エグゼクティブ投票」に参加できます。ガバナンス投票は、参加者がプロジェクトの方針や方向性、決議が必要な重要事項を定めるための投票として用いられます。エグゼクティブ投票は、ガバナンス投票で決まった事項の実行プロセスを具体的に定める投票です。

このように、参加者はメイカーにより、プロジェクトの方向性を定める議決権を持つことができます。

もともとMaker DAOは、プロジェクトの発展に寄与するための非営利財団「Maker Foundation(メイカー財団)」が、運営や利用促進などを主導していました。しかし2021年7月、メイカー財団は将来的に解散し、すべての運営を参加者に委ねる声明を発表しました。

上記のニュースを受けて、メイカーの価格は2倍以上の急上昇を見せました。DAOの運営において影響力を持つ団体が存在しなくなり、民主的な組織として歩みを進めるMaker DAOの動きに、投資家が注目したものと考えられます。

■ DiFi

またMaker DAO内では、ガバナンストークンのほかにも、複数の暗号資産を担保にして価値が安定的に調整されたステーブルコイン「Dai」が発行されます。このようなWeb3の金融サービスは「DeFi(Decentralized Finance)」と呼ばれます。

DeFiはブロックチェーンを基盤に、取引や手続きを自動化する仕組み「スマートコントラクト」が実装されているため、銀行や証券会社のような中央集権的な仲介者を通さず運営されています。

DeFiのメリットには、従来の銀行間送金とは異なり、利用者が海外に送金する場合でもタイムラグの短縮や手数料の削減などが挙げられます。また、銀行口座を持たない人も利用できる新たな金融サービスとして台頭すると予測されていることが、注目を集めています。

■ NFT

Web3のエンターテイメント領域を中心に「NFT」が話題を集めています。NFTとは、デジタルアートやゲームなどのアイテム情報をブロックチェーンに記録し、複製できない唯一無二の資産価値としてNFT取引所などで自由に売買できます。

NFTのような一意性を証明するトークンによってIP(Intellectual Propert )のあり方や考え方が大きく変わると注目されています。プラットフォーマーやブランド企業が多くのIPを所有していたWeb2.0と異なり、Web3ではコンテンツを作った個人に権利が帰属することが増えてくると期待されていますクリエイターがIPホルダーとなり、直接コミュニケーションすることでIPの活用機会が広がっていくことでしょう。

日本では2022年に、東京・秋葉原の街中をメタバース化した「バーチャル秋葉原」がオープンし、メタバース空間内でクリエイターのNFTアイテムを展示、販売するといった取り組みが実施されています。

Web3の現状の課題と展望

Web3ビジネスの推進はあらゆる分野で期待されています。しかし、世の中に普及するために乗り越えなければならないハードルがあるのも事実です。

まず、日本ではWeb3の事業を進めるためのルールが未整備です。その現状を鑑みて、2022年7月に経済産業省内に「大臣官房Web3.0政策推進室」が設置されました。今後はWeb3に関連する環境整備が徐々に進んでいくものと期待されます。

また、現在のWeb3サービスは日常生活に浸透するようなサービスがまだ少ないため暗号資産保有者や一定のITリテラシーがないと使いこなすのが難しく、利用までのハードルが高いといった課題も挙げられます。

とはいえ、すでにNFTやメタバースへの市場拡大の期待から大企業も続々と事業参入していることからもWeb3の市場は広がっていくと予想されます。今後、日常生活に身近なサービスとして提供されてくれば利用者も増加し、Web3の世界は世の中に浸透していくでしょう。

かつてインターネットがWeb1.0からWeb2.0へ徐々にシフトしていったように、Web2.0からWeb3へも時間をかけて自然に移行していくと予測されます。Web3を活用したどんなサービスが登場するのか、今後の展開に注目です。

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