リアル資産トークンは金融エコシステムの救世主?2024年注目の「RWA」
こんにちは。ディーカレットDCPの「DE BEYOND」編集部です。
中央銀行デジタル通貨(CBDC)をめぐるトランプ前大統領の発言など、2024年もブロックチェーンやデジタル通貨にまつわるトピックスが飛び交っています。そうしたなかWeb3分野で2023年から注目を集めているキーワードの一つが「RWA」。金融関連のウェブメディアやニュースサイトで取り上げられる機会も増えてきました。
RWAとは具体的にどういったもので、次世代の金融とデジタル社会にどんな影響をもたらすのでしょうか?RWAが注目される背景や事例とあわせてご紹介します。
RWAとRWAトークン
RWA(Real World Asset)とは名前の通り、現実世界で私たちが保有する資産のこと。
具体的には不動産や株式、証券、金(ゴールド)・穀物をはじめとする金融商品など。より身近なところでは、トレーディングカードをはじめとするコレクターズアイテム、アート作品、その他、希少性の高いワインやウイスキー、時計などもRWAに含まれます。こうしたRWAをブロックチェーン技術によってデジタル化したのが、RWAトークンです。
RWAトークンは、リアルな資産に裏付けられたデジタルな価値そのもの。現実世界の不動産や株式が取引できるのと同様、RWAトークンのオーナーもトークンを売却して対価を得ることができます。
また、発行元(RWAプロジェクトの運営会社など)にRWAトークンを返却し、その引き換えに現物資産やサービスを受け取るユースケースが存在します。
後ほど詳しくご紹介しますが、RWAトークンの取引には、仲介料・手数料の削減、スムーズな資金調達など、現物資産にはない数多くのメリットがあります。
セキュリティトークンやNFTとの違いは?
RWAはNFT(非代替性トークン)の種類の一つとして紹介されることが多いようですが、後ほど事例として取り上げる「ジパングコイン」のように金(ゴールド)に連動したコモディティ型の暗号資産として発行されているものもあります。
有価証券であるセキュリティトークン(ST)に分類される商品も含め、法的には明確な定義はされていません。
いずれにしてもRWAは、リアルな資産(もしくは権利)をデジタル化するという点が特徴です。こうしたRWAトークンが注目され、多くのメディアで取り上げられるのには、どういった背景があるのでしょうか?
「クリプトウィンター」とリアルな資産
RWAトークンが注目を集める背景にあるのが、暗号資産を中心とした分散型金融(DeFi)市場の現状です。
仲介者を介さずユーザ同士が直接取引できるDeFiは、次世代の金融サービスとして期待を集め、2020年頃から多くの投資家が参入。ビットコイン、イーサリアムなど暗号資産の取引が活発に行われるようになりました。
しかし、2022年に状況が一変。リブラ*1 のプロジェクト解散やビットコインの暴落を受け、多くの投資家がリスクを取らずに利回りを確保しようとした結果、資産の流動性が下がり、マーケット全体が冷え込みました。
「クリプトウィンター(暗号資産冬の時代)」と呼ばれるこの状況は2023年以降も続いていて、現在DeFi全体のTVL*2は約360億ドル。2022年4月時点の約1,635億ドルと比べ、4分の1以下に減少しています 。
その一方、RWA市場の総額は800兆ドル以上と言われており、不動産、株式など莫大な額の資産が世界中の金融マーケットで取引されています。
ブロックチェーン技術を活用し、これらをトークンとして取引できるようにすれば、暗号資産取引に偏りすぎたDeFiの現状を是正し、本来の姿である金融エコシステムとして継続的に発展させていくことができるはずです。RWAトークンにはこの観点から大きな期待が寄せられています。
実際、RWAトークンの研究を進めている金融機関は少なくありません。例えばシティバンクは2023年3月に「Money, Tokens and Games」というレポートを公開。RWAトークンをブロックチェーンを活用した取引における「キラーユースケース」とし、2030年までに数兆ドルの現物資産がトークン化されると予測しています。
企業の経済活動や私たちの生活はどう変わる?
続いてRWAトークンが企業の経済活動や私たちの生活にどんなメリットをもたらすのか見ていきましょう。
スムーズな資金調達が可能に
現在、中小企業やスタートアップが公的機関や銀行から資金調達しようとすると、法的手続きや審査に大きな手間がかかります。信用問題がネックとなり、融資を受けられないケースも少なくありません。
一方で非上場株などをRWAトークンと同様の方式と分類されるST(デジタル証券)として発行すれば、こうした手間を大幅にカットし、スムーズな資金調達が可能になります。また、投資家にとっても投資商品の選択肢が広がります。
取引コストが下がる
仲介者を媒介しないということは、取引にともなう中間コストをカットできるということ。例えば、不動産をRWAトークン化した場合、エージェントや不動産管理会社に仲介手数料を支払うことなく、買い手や借り手と直接契約できます。
また金融商品の取引においても、証券会社などに高額な手数料を支払う必要がなくなります。
当社が進めているデジタル通貨DCJPY(仮称)を使えば、自己募集という方式で資金を調達し、分配金を自動化できるというメリットもあります。
資産の流動性が高まる
デジタルな価値であるRWAトークンは分割することも可能です。人気クリエイターによるアート作品、年代物のウイスキーなど、個人の予算で買うのが難しい高額アイテムも、トークン化によって価格が分割・小口化されれば、より多くの人が購入できるようになるでしょう。
その結果として資産の流動性が高まり、投資リスクの分散や取引価格の安定化につながっていくはずです。
なお、現実世界の資産をデジタル化し、シームレスかつ低コストの取引を可能にするRWAトークンは、同じく現実世界の銀行預金をトークン化した民間デジタル通貨と高い親和性があります。
シティバンクのレポートにあるように多くのRWAがトークン化され、個人・企業の間で広く取引されるようになれば、その決済手段として預金型トークンが大きな役割を果たすのではないでしょうか。
RWAトークンの事例3選
1.NOT A HOTEL
NOT A HOTEL株式会社(東京都渋谷区)が運営しているサービスです。日本全国のホテル、ヴィラのメンバーシップ会員権(利用権)をトークンとして分割販売しています。
トークンには「THE KEY」というデジタル鍵が付いており、購入者は施設に1日単位で宿泊することが可能。スケジュールが合わない場合は、THE KEYを他のユーザに譲渡したり、販売したりすることができます。
2.HINATA
株式会社FUWARI(東京都千代田区)は酒蔵で熟成させた日本酒をトークン化し、自社のマーケットプレイス「HINATA」で2023年8月から販売しています。
ラインナップされている銘柄は、100年以上の歴史を持つ老舗酒蔵・本田商店の「秋津」などです。トークンの購入者は現物の保管場所などに悩まされることなく、経年変化する熟成酒を好きなタイミングで楽しむことができます。
2024年1月時点では、権利が確定したトークンと商品を引き換えるサービスの提供のみにとどまっていますが、運営元のプレスリリースによると、今後はトークンの二次流通も予定しているそうです。
3.ジパングコイン
ジパングコインは三井物産デジタルコモディティーズ株式会社(東京都千代田区)が発行しているコモディティ連動型の暗号資産です。コインの単価が金(ゴールド)1gの市場価格と同じになるよう設計されています。
法定通貨連動型のような決済機能はなく、金をデジタル化したRWAトークンとして、主にインフレヘッジ(物価上昇にともなう資産保護)を目的に購入されています。