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中央銀行デジタル通貨(CBDC)と民間銀行デジタル通貨の違いは?

Q.中央銀行デジタル通貨(CBDC)とは何ですか?

A.「中央銀行デジタル通貨(CBDC)」とは「Central Bank Digital Currency」の略です。日本銀行の定義では次の要件を満たすものであると言われています。(1)デジタル化されていること(2)円などの法定通貨建てであること(3)中央銀行の債務として発行されることの3つです。

参考 ▷ https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/money/c28.htm

Q.日本でCBDCは発行されていますか?

A.2023年の5月時点で発行はされていません。日銀は21年より3段階に分けて実証実験を始めており、本年4月からは民間の金融機関や決済事業者と実証実験を開始しました。また、民間事業者の知見を幅広く取り入れてパイロット実験を実施するための「CBDCフォーラム」も新たに立ち上げ、検証を加速させています。

参考 ▷ https://www.boj.or.jp/paym/digital/dig230403a.htm

Q.世界でCBDCはすでに発行されていますか?

A.2020年10月に世界で初めてCBDC「サンドダラー」を発行したのは、中米カリブ海のバハマです。その後しばらくしてから近隣の東カリブ諸国でもCBDCが発行されました。

カリブ海域の島国でいち早くCBDCが取り入れられたのは、小さな島がいくつもあるうえにハリケーンによく見舞われるため物理的に現金を届けるのが時に困難で、運送コストが高くつくといった地理的な要因がありました。

その後も、比較的現金インフラが整っていない国が金融政策の一環でデジタル通貨を発行するケースが見受けられますが、全体的にCBDCの発行にこぎつけた国は多くありません。

Q.欧米や中国でもCBDC発行に向けた動きは起きていますか?

A.各国事情は異なりますが、22年の時点で主要国で発行まで至ったところはなく、それぞれ国内の既存インフラとの調整や他国の様子を伺っている状況です。そのなかでもっともCBDCの取り組みが進んでいるのは中国です。

22年の北京冬季オリンピックでデジタル人民元「e-CNY」の試験発行をしたり、国内23ヶ所でデジタル人民元を配るなどの実験を行いましたが、AlipayやWeChat Payといった民間企業が提供するデジタル決済が生活全般をカバーしているなか、デジタル人民元が好んで使われ続けているわけではないようです。

Q.CBDCと民間銀行デジタル通貨の違いは何ですか?

A.一番大きな違いは中央銀行が直接債務者になるか、民間銀行が債務者になるかということです。

Q.安全面で違いはあるのでしょうか?

A.日本国内において、安全性の面ではあまり大きく変わらないと言えます。中央銀行の通貨は、倒産などで債務不履行(デフォルト)に陥り損失を被る「信用リスク」がありません。なぜなら、国がデフォルトすることはほぼあり得ないからです。

また民間銀行の場合も、決済用預金であれば預金保険で全額カバーされますので、信用度で言うと中央銀行債務とほぼ同じと言えます。

Q.CBDCと民間銀行デジタル通貨、両方とも必要なのでしょうか?

A.中央銀行と民間銀行は、それぞれ異なる役割で成り立っています。中央銀行は大きな役割として、通貨インフラを効率的に回し、価値の安定したお金を発行することがあります。

一方で民間銀行は決済にとどまらず、資金仲介や資源配分という役割を果たしています。また、個別ニーズを掘り起こしてサービスを開発していくのは、民間の得意領域と言えます。

デジタル通貨になった場合も同じようにそれぞれの得意領域を担っていくということには変わりないと考えられます。

Q.CBDCと民間銀行デジタル通貨は、共存するのでしょうか?

A.今でも中央銀行と民間銀行は共存しています。それぞれの役割や特性を考えると、デジタル通貨が発行されても自然と共存するかたちに収れんされていくと思われます。
 
また世界的に見ても、先進国の中央銀行は仮にCBDCが発行されたとしても決済の主役を担うのは民間であると表明しています。つまり、民間と補完をし合いながら通貨インフラをつくっていくような体制が濃厚です。

Q.デジタル通貨によるメリットは何でしょうか?

A.これまでの中央集中型の管理システムでは、電算センターの稼働時間の制約を受けるため、ダウンタイムがあります。これに対し、デジタル通貨は分散型の構造の下で稼働するトークン型システムであるため、特定の電算センターの稼動時間に左右されず、24時間365日動かし続けることが可能です。
 
また、中央集中型管理システムでは、「ここがダウンすると全てのインフラが止まる」という“単一障害点(SPOF:Single Point of Failure)”が生じてサイバー攻撃の対象になる危険性があります。一方、トークン型は分散型なので複数のコンピュータが同じデータを共有しながらネットワークを形成しています。そのため、単一障害点が発生せずにサイバー攻撃を防止しやすいです。

22年は、暗号資産や一部のステーブルコインの価格が暴落しました。そのため、ブロックチェーンや分散台帳技術を取り入れつつも、価値が安定している決済手段が世界的に求められています。このような点でデジタル通貨はメインストリームをいっていると言え、今後ますます注目が高まっていくと考えられます。




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